遺品整理とは、故人の遺した品々を整理し、必要なものと不必要なものに分ける作業のことです。遺品整理を行うにあたって、具体的な進め方、はじめるタイミング、費用、業者の選び方など、知っておいた方がいいことはたくさんあり、今回はそれらの基本的な知識について解説していきます。
遺品整理とは?
遺品整理は、大切な家族であるご遺族の生きた証を片付けることを意味します。遺品整理をしている期間は、故人を悼むご遺族にとって、精神的な負担が大きい時期でもあります。実際、亡くなった方が生前に愛用していた品々を手にすると、思い出が蘇り、ついつい整理が進まなくなると仰るご遺族はかなり多いです。大切なご家族を亡くされたご遺族にとって、遺品整理は避けては通れない大きなテーマなのです。
遺品整理が注目される背景
近年、この遺品整理が注目される背景には、いくつかの社会的な変化が影響しています。
高齢化と核家族化による「遺品整理の必要性」
日本では高齢化が急速に進んでおり、亡くなる方の数も年々増加しています。また、核家族化が進んだことにより、親族が近くに住んでいないケースも多く、遺品整理を一人で行わなければならない場面も増えています。こうした社会的背景のもとで、遺品整理はより多くの人にとって他人事ではなくなり、自分にも関わりがある問題となってきています。
また、遺族にとって故人の遺品は思い出が詰まったものであり、簡単に処分することが難しいと感じる人も多いです。特に、整理を進める過程で故人の記憶が蘇り、心が揺さぶられることもあるでしょう。こうした精神的な負担を軽減し、スムーズに進めるために、遺品整理に関する情報や知識が求められています。
心の整理と「終活」意識の高まり
遺品整理は物の整理にとどまらず、「心の整理」を意味することもあります。遺品を一つ一つ手に取って仕分ける作業を通じて、故人への感謝や思いを改めて感じ、残された人が前に進むきっかけにもなるのです。また、終活(しゅうかつ)という考え方が広まるにつれて、遺品整理に関心を持つ人も増えました。自分が亡くなった後、遺族がスムーズに遺品を整理できるよう、生前から身の回りを整理するという方も増えており、遺品整理の必要性や認知度は、ますます高まっています。
誰もが直面する可能性のある「遺品整理」
遺品整理は、どんな家族にもいずれ訪れる可能性のある問題です。特に、家族と離れて暮らしている方、親族が高齢の方には、事前に知識を持っておくことで、いざという時に心身の負担を減らすことができます。次に、遺品整理の具体的な方法などについて解説していきます。
遺品整理の方法
遺品整理の進め方には大きく分けて2つ、ご遺族が自ら行う方法と、遺品整理を代行してくれる業者に依頼する方法があります。
①遺族が自分たちで行う場合
遺品整理はご遺族だけで行う場合も多いです。ご遺族で行うメリットには、故人が大切にしていたものを通して、思い出を振り返りながら整理をすることができる、費用を安く抑えることができるといったところが大きいです。ご遺族で集まれる時間・環境がある、体力や精神的に余裕がある場合には、ご遺族で遺品整理するのもおすすめです。
②業者に依頼する場合
ご遺族が遠方に住んでいる、忙しくて集まれる時間が取れない、体力的・精神的に余裕がなくて自分たちで行うのは難しい、などの場合には、遺品整理を代行してくれる業者に依頼するという方法もあります。業者に依頼する場合、以下のようなメリットが考えられます。
- 短時間で遺品整理が完了する
- 精神的・体力的な負担を軽減できる
- 誰が行うのかなど遺族同士の揉め事を回避できる
- 不用品の処理を適切に行ってもらえる
このように、費用は掛かりますが、遺品整理をスムーズに終わらせたい場合には、業者に依頼してしまうのがおすすめです。自身で遺品整理を行う場合、不用品の片付け・供養・リサイクル・清掃などをすべて自身で手配するため、時間・コスト・労力が時間が必要になります。
遺品整理の基本的な進め方と流れ
遺品整理を始めるにあたって、基本的なステップと流れを解説します。
STEP1. 準備段階:遺品整理の目的を家族で共有
まず最初に大切なのは、遺品整理の目的を明確にし、家族で共有することです。「形見として残す物を選ぶ」「遺品の一部を寄付する」「貴重品を探す」など、家族ごとに目的は異なるかもしれません。あらかじめ家族で話し合い、整理する物の基準を確認しておくことで、スムーズに進められます。また、必要であれば、整理の方法や期間についても話し合っておきましょう。
STEP2. 貴重品・重要書類の確認と仕分け
遺品整理では、まず貴重品や重要書類の確認から始めるのが一般的です。通帳や保険証書、不動産関連の書類、印鑑、貴金属など、紛失を避けたいものは最初に探し出し、保管場所を決めます。この段階で、遺産相続に関わる重要な情報が見つかることもあるため、慎重に確認するようにしましょう。
STEP3. 思い出の品や形見の選別
次に、思い出の品や形見として残す物を選別します。アルバムや手紙、故人が愛用していた物など、家族にとって特別な意味を持つ品は、時間をかけて選ぶと良いでしょう。これらの品は精神的な区切りをつけるうえでも重要です。また、迷うものについては、一時保管として段ボール箱などにまとめ、後日改めて整理することもおすすめです。
STEP4. 不用品の整理と片付け
最後に、不用品の整理を行います。遺品の中には家財や家具など大型の物も含まれるため、どのように処分するか事前に計画を立てると効率的です。燃えるゴミ、不燃ゴミ、リサイクルできるものなどを自治体のルールに従って分別し、不用品は適切に捨てます。リサイクルや寄付が可能なものについても、この段階でまとめておくとよいでしょう。
家族で話し合うべきポイント
遺品整理は家族にとって大切な時間ですが、進めるにあたって意見が分かれることもあります。以下に、スムーズに進めるために事前に家族で話し合っておくべきポイントを紹介します。
1. 遺品の保管・処分に関する意見のすり合わせ
遺品をどう扱うかについては、家族ごとに考えが異なる場合もあります。特に、価値のある品や思い入れの深い品については「残すか」「譲るか」「処分するか」の意見が分かれることがあるため、互いの意向を尊重しつつ、折り合いをつけることが大切です。
思い出の品の分け方や形見分けの方法
遺品整理の過程で、思い出の品や形見分けについても話し合っておきましょう。アルバムや手紙、故人が愛用していた服やアクセサリーなどは、それぞれの思い出に基づいて分ける方法が一般的です。事前に、どのように分けるかを相談しておくと、後のトラブルを防ぐことができます。
故人の意向や希望の尊重
故人が生前に「この物は残してほしい」などの意向を示していた場合、それを家族で確認し、なるべく尊重するようにしましょう。故人の意志を尊重することで、家族全員が納得して整理を進められ、心の負担が軽減されます。
遺品整理を始める時期
①葬儀後すぐの場合
葬儀後すぐのタイミングというと、ご遺族にとってはまだ色々な手続き等が残っている状態なので、遺品整理を始めるのはまだ早いと感じる方が多いかと思います。しかし、故人が賃貸物件や介護施設に入居していた場合はこのタイミングで行うことがベストなのです。
その理由としては、退去が遅れてしまう分家賃が発生してしまったり、施設の退所期限が決まっていたりすることが多いためです。タイミングとしては、ご遺族にとってまだ負担の大きい時期ですが、契約内容を確認して、なるべく早く遺品整理を始めることをお勧めします。
②死後手続きを終えた後の場合
このタイミングあたりから遺品整理を始めるご遺族は増えてきます。
死後手続きはかなり複雑かつ行うことも多いため、それを終えた後で着手すると、比較的余裕をもった状態で遺品整理を始めることができます。
③法要のタイミングに合わせた場合
四十九日、新盆、一周忌などの法要を一つの節目として遺品整理を始めるご遺族は、割合としては一番多いです。
理由としては、精神的に一つの区切りとして遺品整理を始めようという気持ちになるケースが多いことや、法要のタイミングだとご遺族が集まりやすいため、そのタイミングで始めようとなる場合が多いようです。
このタイミングで遺品整理を始めると、ご遺族同士で思い出を語りながら故人を偲んだり、気持ちを分かち合って気持ちに整理がつきやすいというメリットがあります。
法要のタイミングで遺品整理を始めようと考えておられる方は、事前に他のご遺族にも遺品整理をする旨を事前に伝え、スムーズに始められるように気をつけましょう。
遺品整理の費用
遺品整理にかかる費用は、作業の内容や量、部屋の間取りなどによって大きく異なるため、あらかじめ相場を理解しておくことが重要です。一般的に、遺品整理を業者に依頼する場合、例えば1R~1Kの広さの遺品整理費用は3万円~10万円程度になることが多いですが、大きな家や整理する遺品が大量にある場合は、それより費用も高くなる場合がほとんどです。
その他に地域によっても費用が異なる場合があります。
都市部では需要が高く、競争も激しいため、料金が高めになる傾向もありますので、業者に依頼する場合には、事前に見積もりを用意してもらい、内容をしっかりと確認するようにしましょう。
自分で行う場合の費用
自分で遺品整理を行う際に必要な費用として、まず遺品を仕分けして整理するためのゴミ袋やダンボールなどの梱包資材代があります。また、捨てるために処理費用が発生することがあります。地域によっては、ゴミを処理するための料金が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
遺品整理の業者の選び方
業者に依頼して遺品整理を行う際には、業者選びはとても重要なポイントです。料金体系や説明が明瞭で平均的な費用相場の範囲か、問い合わせ時の対応は良いかなどのポイントも確認し、契約は即決せずに他社とも比較することをおすすめします。安心できる遺品整理の専門業者であれば、遺品整理の現場の経験値も高く、ご遺族の要望や意向に沿った柔軟な対応が期待できます。
優良業者とは
優良な遺品整理業者を見つけるためには、いくつかの注意点があります。悪徳な業者の被害報告では、見積りには含まれていなかった費用を後からかなり請求されたというケースもあります。口コミサイトや評価サイトから利用者のレビューを確認しましょう。
見積り内容では、残さない品物の処分代や買取は見積りの料金内で対応してもらえるのか、追加料金が発生する場合などはあるのか?などをあらかじめ確認し、書面(メールなど)で出来るだけ残すようにすることが大切です。
まとめ
遺品整理とは、故人が残した大切な品々を整理する作業であり、ご遺族の心の整理をする作業でもあります。
遺品整理を円滑に進めるためにも、まずご遺族同士でよく話し合い、後でトラブルにつながることが無いよう慎重に進めることをお勧めします。
最後に、遺品整理は心身に負担がかかる作業でもあります。無理をせず、自分たちのペースで進めることが、故人を偲ぶ思いを深め、家族の絆を再確認する大切な時間に繋がります。遺品整理は単なる作業にとどまらず、心の整理でもあることを忘れないようにしましょう。