家族の一員として共に過ごしてきたペットとのお別れは、家族を失うのと同じような深い悲しみを伴います。その存在がどれほど大切だったか、ペットがいた空間を見るたびに胸が締め付けられるような気持ちになることでしょう。
ペットが愛用していた品々を目の前にすると、「いつから、どうやって整理を始めたらいいのだろう」「片付けなければならないけれど、捨てたくない」と迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
本記事では、ペットの遺品整理を進めるうえで役立つ具体的な方法や、保管する際の注意点を解説します。無理に答えを出そうとせず、ペットとの思い出を大切にしながら整理を進めるためのヒントをご紹介します。
ペットの遺品整理を始めるタイミング
ペットと死別してしまった飼い主が陥る心理的な影響に「ペットロス」と呼ばれる心身の不調があります。よくある症状としては無力感や虚脱感、めまい、気持ちの浮き沈みが激しい、涙が止まらない、食欲不振、過食、睡眠障害などがあります。
このようなペットロスの状態になっている間は特に、愛するペットの遺品を整理する気持ちになることは難しく、気持ちを切り替えられるまでに時間が必要になります。
ペットの遺品整理を始めるタイミングは、特に決められたルールがあるわけではありませんので、無理に急ぐ必要はありません。気持ちの整理がついたと感じたときが、遺品整理の始め時ともいえます。
気持ちの整理がつくタイミングは人それぞれです。まだ悲しみの最中にいる時に、無理に遺品整理を始めることは避けた方が無難です。ある程度気持ちが落ち着いた状態になったタイミングで、ペットとの特別な思い出を振り返りながら遺品整理を行うことで、気持ちも整理されて、前を向くことができるようになるでしょう。
ペットの遺品整理の進め方
ペットが亡くなった後、その思い出が詰まった遺品をどう整理するかは、多くの方が悩まれる部分でしょう。
ここでは、ペットの遺品整理の具体的な流れについてご紹介します。
①品物を必要な物と不用なものに分ける
ペットの遺品整理を行うときは、まず遺品を必要なものと不用なものに仕分けをすると、この後の作業がスムーズに進みます。
この時、遺品をカテゴリーごとに分類して考え、そのカテゴリー単位で整理していくことがおすすめです。具体的には、衣類・首輪などの身に着ける物、おもちゃ類、ご飯やおやつなどの食べ物類などのカテゴリーに分けた場合、今日は身に着ける物を整理する、明日はおもちゃ類を整理するといったふうに考えると、一日ごとに目標が立てられて、作業にメリハリが付けられます。
もしも必要なものか不用なものかの判断に迷うものがあったら、一旦必要な物として取っておくのも良いでしょう。ペットの遺品整理は、無理をせず、出来るところからコツコツ進めていくことがポイントです。
②必要な物は保管場所・保管方法を考える
必要な物として分類した遺品は、保管する場所と保管方法を考えましょう。
遺品を保管する場所は、劣化を防ぐために気温や湿度が安定し、かつ日光が当たらない場所を選びましょう。
おもちゃや洋服、ベッドなどの布製品は、虫がつきにくく通気性の良い袋や布製のケースに入れることで、劣化を防ぐことができます。また、湿気が多い季節には、乾燥剤を一緒に入れておくとカビの予防にもなるのでおすすめです。
➂不用なものの処分方法を考える
不要なものだからといって、すべてを捨ててしまうことには抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。ペットの遺品を処分する方法には、以下のようにさまざまな選択肢があります。
・ペットを飼っている友人・知人に譲る
まだ使えるグッズなどは、身近で同じようにペットを飼っている友人や知人に譲るという選択肢もあります。特に、おもちゃやベッド、リードなどは愛するペットが日常的に身に着けていたもので、捨てるのをためらってしまう場合は多いでしょう。
遺品を受け継いでもらう際、ひとつ注意点があります。ペットは人間よりも感覚器官が敏感なため、香りの強い洗剤や柔軟剤を使用すると、目や鼻の粘膜が刺激されて炎症を引き起こす可能性があります。念のため、刺激の弱い洗浄剤を使い、よく洗い流すと受け取り手も安心して使用できます。
・動物保護団体に寄付する
ペットの遺品整理を進める中で、もう使わないおもちゃや寝具・フードボウル・ペットシーツなどが出てくることがあります。未開封のものや状態がきれいなものは、動物保護団体へ寄付することも可能です。大切なペットのものが他の動物たちの助けになることで、気持ちが救われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
寄付先としては、地域の動物保護団体やシェルター、ボランティアグループなどが考えられますが、使用済みのグッズも引き取ってもらえるかについては、各団体によって方針が異なります。事前に受け入れ可能な物品や寄付方法について確認をしてから寄付しましょう。
・遺品供養する(お焚き上げ)
ペットの遺品については、遺品供養(お焚き上げ)をするという選択肢もあります。
お焚き上げの依頼先としては、ペット専門の霊園や葬儀屋、神社、お寺があります。しかし、依頼するとしても、ペットの遺品だけをお焚き上げしてくれるかは各施設によって方針が異なります。事前に問い合わせ、お焚き上げが可能かどうか、お焚き上げの費用がいくらかかるのかなどについても、しっかり確認しましょう。
・遺品整理業者に依頼する
遺品整理業者の中には、ペットの遺品整理も行ってくれる業者が存在します。
そのため、ペットの遺品整理を自分で行うのが難しい、または負担を感じる場合には、遺品整理業者に依頼すること検討するのもおすすめです。遺品整理業者は、様々な遺品整理の現場に携わっていますので、依頼者の気持ちに配慮しながら希望に沿った形で作業をしてくれます。
ペットの遺品整理を行う際の費用は、業者によって幅があります。そのため、依頼する際は複数の業者に相談し、それぞれ事前見積もりを出してもらうと良いでしょう。
・一般ゴミとして片付ける
遺品の中で、古くなってしまい誰にもあげられないものや、もう使わない消耗品類などは、ゴミとして捨てることになります。
ゴミとして捨てる際は、自治体が定める処分方法に応じて処分するようにしましょう。臭いのあるものの場合は、漏れないようにしっかり密閉した状態で捨てることで、異臭などの影響が出ないように配慮できます。
思い出の保管方法
大切なペットが残した遺品には、たくさんの思い出が詰まっています。
ペットとの日々を忘れないためにも、手元に残すことにした遺品は適切な方法で保管し、少しでも長持ちするように気をつけましょう。
以下に、ペットの遺品を保管する際に気を付けておきたいポイントをいくつかご紹介します。
残しておきたいものはクリーニングがおすすめ
おもちゃや毛布など、ペットが日常的に使っていたものは、時間が経つにつれて汚れや臭いが気になることがあります。
クリーニングに出すか、自宅で洗えるものはしっかりと洗って、できるだけきれいな状態で保管するようにしましょう。
毛・羽・ひげの保管方法
ペットの毛や羽、ひげは、その子の個性や存在を感じさせる特別な思い出の品ですので、残しておく方は多いと思います。
それらを保管する際は、清潔な状態にしておくことを心がけましょう。毛や羽は、しっかり乾燥させてから保存すると劣化を防げます。自然乾燥させた後、密閉できる小さな容器に、湿気や虫から守るための脱酸素剤や乾燥剤を一緒に入れて保管するのがおすすめです。ひげは、形や状態を長持ちさせるために、柔らかい布などに包んでから、毛や羽と同じように保管しましょう。
写真の保管方法
写真を保管する際は、アルバムにまとめていつでも見返せる形にして保管しましょう。写真類は湿気に弱いため、高温多湿な場所に置いておくのは避けましょう。
また、写真をデジタル化することもおすすめです。スマートフォンやスキャナーを使ってデジタルデータとして持っておけば、経年劣化の心配もありません。
メモリアルグッズの製作
ペットの遺品については、遺品を使ってメモリアルグッズを製作するという選択肢も存在しますので、いくつか方法をご紹介します。
[1] メモリアルアイテムを作成する
メモリアルフォトフレーム:お気に入りの写真とペットの名前を刻んだフォトフレームを作成する。
ジュエリーやキーホルダー: ペットの毛や骨壷から少量の遺灰を加工して、ペンダントやキーホルダーにする。
足型・鼻型のレプリカ:生前に取っておいた足型や鼻型をレジンなどで加工して飾る。
[2] 手作り品に形見を取り入れる
毛や羽でアート作品:抜け毛や羽毛を使用して、絵画やコラージュアートを作成する。
クッションやぬいぐるみ:使用していた毛布やタオルを使って手作りクッションやぬいぐるみを作る。
写真アルバムやスクラップブック:生前の思い出をまとめたオリジナルアルバムを作成する。
[3] デジタルで形見を残す
メモリアル動画:写真や動画を組み合わせて、ペットとの思い出を動画作品にする。
クラウドアルバム:デジタル写真をオンラインアルバムとして保存し、いつでも見返せるようにする。
メモリアルアプリの利用:専用アプリを利用して、日々の思い出やメモを記録する。
[4] 家に特別なスペースを作る
メモリアルコーナー:ペットの写真、首輪、おもちゃなどを飾った特別な場所を家の一角に作る。
小型の仏壇や棚:名前入りのプレートやろうそくを置ける仏壇を設置する。
[5] 自然の中で形見を残す
ガーデニング:ペットの名前をつけた木や花を植えて、成長を見守る。
遺灰を使った記念樹:遺灰を土と混ぜて植樹し、自然とともに形見を残す。
記念の石碑やプレート:庭や公園に小さな石碑やネームプレートを設置する。
[6] 社会や誰かに役立てる形で残す
寄付や支援活動:ペットの名前で動物保護団体に寄付をする。
記念品の寄贈:生前愛用していたベッドやおもちゃを動物施設に寄付し、次の命に役立てる。
[7] 思い出を生活に取り入れる
日常使いのアイテムに加工:首輪やリードをリメイクしてブレスレットやバッグチャームにする。
ペットをモチーフにしたグッズ作成:ペットそっくりのぬいぐるみやフィギュアをオーダーメイドで作る。
イラストや肖像画:ペットの写真をもとにしたオリジナルの絵画やデジタルアートを作る。
最近注目のサービスについて
最近、海外を中心に流行っているものでは、自身のペットにそっくりなぬいぐるみをオーダーメイドで作製してくれるサービスがあります。立体的な等身大のぬいぐるみを手元に置いておくことで、写真よりもリアルにペットとの思い出を振り返ることが出来ます。検索すると、日本でも同様のサービスを提供している個人作家さんや企業があるようですので、気になる方はご覧になってみてください。
以上のように、メモリアルグッズを通して、ペットとの思い出や愛情を形に残すことができます。前向きに思い出を残したら、残りの遺品については計画的に整理していきましょう。
ペットの遺品整理チェックリスト
ご自身でペットの遺品整理を行う場合のチェックリストは以下の5点です。
□遺品をいるものといらないもので分けた
□必要なものの保管場所を決定した
□保管する物をクリーニングした
□処分先(ペットのいる友人・動物保護団体・お焚き上げ)を決めた
□業者に依頼する場合は複数の見積もりを取った(依頼する場合)
ペットの遺品整理業者に依頼する際の注意点
ペットの遺品整理を専門業者へ依頼する際は、トラブル回避のために、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
ここでは、ペットの遺品整理を業者に依頼する際に確認すべきポイントや注意点についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ペットの遺品整理も可能かを確認する
ペットの遺品整理を業者に依頼する際、まず確認しておきたいのは、ペットの遺品整理が可能かどうかです。ペットの遺品整理を行っていない業者もあり、さらに、どこまでのサービスを提供しているかも業者によります。そのため、事前に自分が求めていることが依頼可能かどうかを事前にチェックしておきましょう。
悪徳業者に注意する
ペットの遺品整理を業者に依頼する際は、悪徳業者に引っかかってしまわないように十分注意しましょう。
具体的に、悪徳業者は料金形態が不透明で、必要以上の追加費用を請求してくることがあります。それを防ぐためには、事前に見積もりを依頼し、サービス内容について納得のいく説明を受けることが大切です。
また、契約内容をしっかりと確認し、後から思わぬトラブルを避けるためにも、書面での契約をおすすめします。
口コミ・評判をチェックする
口コミや評判をチェックしておくと、遺品整理業者を選ぶ際の参考になるでしょう。実際に利用した人の声を参考にすることで、業者の信頼度やサービスの質を把握することができます。
口コミサイトを見る際は、1つのサイトだけで判断するのではなく、複数のサイトを比較すると、より詳細な情報を得ることができます。中には過剰に評価を高めた投稿も掲載されている場合もあるため、一つの意見だけではなく、客観的な視点で見るようにしましょう。
また、身の回りで長年ペットを飼っている知人の方からの紹介も、ひとつの有効な手段です。安心材料として、参考に聞いてみることをおすすめします。
心の整理も大切に
冒頭で解説したように、ペットを亡くした後は、心の中に大きな喪失感や不調を抱えることも少なくありません。まずは、自分の気持ちに無理をさせず、「整理を始める準備ができた」と感じるまで時間を取ることが大切です。
時には、思い出を振り返りながら泣いたり、友人や家族に話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。また、周囲に話すことが難しい場合には、ペットロスに特化したカウンセリングやオンラインのコミュニティを利用するのも一つの方法です。
まとめ
今回はペットの遺品整理についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
前向きにペットの遺品整理と向き合うためには、「心の整理」と「物の整理」の両方が大切です。自分の気持ちの整理がついた段階で、どこまで遺品整理を行うのかをじっくり考えて、思い出を形にしてみてください。
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