形見分けは、故人の大切にしていた品物を遺族や親しい友人が受け継ぎ、故人を偲ぶための大切な行為です。しかし、形見分けを行う際には、適切な時期やマナーの配慮、そして場合によっては税金についての知識が必要です。このコラムでは、形見分けをスムーズに進めるためのポイントを詳しくご紹介します。
形見分けとは?その意味と役割
形見分けとは、故人の思い出が詰まった品を受け継ぎ、故人を偲ぶための行為です。遺族や親しい人たちが、故人が生前に愛用していた品を通じてつながりを感じ、心の整理をする役割も果たします。
形見分けを行う時期
形見分けを行う時期は、一般的に故人の葬儀が終わった後、四十九日を過ぎた頃が多い傾向にあります。四十九日法要や五十日祭は、忌明けを意味する節目の日であり、この日を境に故人が仏のもとへ旅立つとされます。そのため、このタイミングで形見分けを行うことは、故人を見送り、思いを共有する大切な儀式となります。
ただし、形見分けは遺族の心情が整ってから行うことが望ましいです。葬儀後には、心を落ち着けるための時間も必要ですので、時期を急ぐことなく、気持ちが準備できた時に行うようにしましょう。
形見分けのマナーと進め方
形見分けを行う際は、ただそのまま品物を渡すのではなく、慎重に対応することが大切です。ここでは、形見分けをする際に知っておきたいマナーを3つご紹介します。
①品物のマナー
形見分けで渡す品物は、しっかりと手入れを行ってから渡すことが重要です。
まず、目で見た際に汚れなどがついていたら適切な方法できれいにしましょう。また、貴金属や装飾品などは壊れているところがないかもチェックするようにしましょう。
形見分けをもらう側から特に要望などがなかった場合、渡す側は品物をきれいな状態にして渡すことがマナーとされています。
②包装のマナー
形見分けの品を渡す際は、華美な包装は避け、白い紙や半紙で簡単に包むのが一般的です。仏式では「遺品」、神式では「偲ぶ草」と表書きするなど、慎重で丁寧な対応を心がけます。
➂渡し方のマナー
渡す際に最も大切なのは、品物を丁寧に扱い、受け取る相手を思いやった形で渡すことです。形見分けの品は故人との大切な思い出を象徴するものなので、心を込めて丁寧にお渡しします。
形見分けの品物として選ばれるもの
形見分けの際に対象となる品物は、主に以下の4つが一般的に挙げられます。
1.故人が愛用していた日用品
時計や万年筆、装飾品など、故人が日常的に使っていたものが該当します。これらは、故人を身近に感じられる品であり、実用性も高いため、もらった人も使いやすいのが特徴です。
2.数珠などの仏具
故人が生前に使用していた数珠は、火葬時に棺に入れることが一般的ですが、代々受け継ぐこともあります。特に高級な数珠など、故人が後世に残す意図を持っていた品は、形見分けとして適しています。
3. 趣味のコレクション
模型やフィギュアなど、故人の趣味を反映した品物も形見分けに選ばれます。これらは、共通の趣味を持つ知人や仲間に渡すと良いでしょう。
4.衣類
着物やコートなどの衣類もよく形見分けの対象になります。ただし、衣類は傷みやすいため、受け取った後は適切な保管方法を心がけることが大切です。
形見分けで知っておきたい税金のポイント
形見分けを行う際には、税金についてよく理解せずに相続してしまうと、思わぬ支払いが発生してしまうことがあるため注意が必要です。
相続税について
・相続税の対象
相続税は、故人が残した財産が一定の基準を超える場合に課せられる税金です。これには現金はもちろん、不動産や貴金属などの資産も含まれます。
・基礎控除額の計算式
相続税の基礎控除額は、法定相続人の数に応じて異なります。例えば、3人の法定相続人がいる場合、基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となり、相続税を軽減することができます。例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4800万円となり、この額を超えた部分に相続税がかかります。
・形見分けの品が相続財産に該当する可能性
高価な形見分け品が相続財産の対象としてカウントされる場合、相続税が発生する可能性があります。しかし、相続税の課税対象となるかどうかは、品物の評価額やその他の条件によって異なります。これに関しては、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
税理士は、形見分けの品物が相続財産として扱われるかどうか、またその評価額の算出方法についてもアドバイスしてくれます。また、後述する贈与税の適用があるかどうかも確認することが重要です。
形見分けを行う際、高価な品物や相続財産として扱われる可能性があるものについては、税金について理解してから進めると安心です。
贈与税について
・贈与税の対象
贈与税は、他の人から財産を贈与された際に課せられる税金です。形見分けで受け取った品物が高価な場合、贈与税の対象となることがあります。
・基礎控除額
贈与税には基礎控除があり、年間110万円までは贈与税が課せられません。これは、1年間に贈与を受けた金額が110万円以下の場合に贈与税が発生しないことを意味します。したがって、110万円を超える価値の物品を受け取る場合、贈与税が発生する可能性があります。
・贈与税の申告義務
贈与税は、贈与を受けた側が申告する必要がある税金です。基礎控除内であれば、通常は申告が不要となりますが、基礎控除を超える贈与を受けた場合は、確定申告が必要となります。
・形見分けと贈与税
形見分けにおいても、受け取った物が高価であったり、一定の価値がある場合、贈与税がかかる可能性があります。特に、品物が贈与として認識される場合は、税理士に相談することをおすすめします。
形見分けでよくあるトラブルとその解決策
実際にあった形見分けのトラブル事例
親族間で形見分けを巡るトラブルが発生することがあります。特に、故人の思い出が詰まった品物や高価な品物に関して、誰がどの品物を受け取るかについて意見が食い違い、言い争いの事態になることもあります。その結果、形見分けの意味が薄れ、故人の意向に反する結果を招くこともあります。
親族間の対立を避けるための取り決め
こうしたトラブルを避けるためには、事前に親族間でどの品物を誰が受け取るかを話し合い、透明性を持った取り決めをすることが非常に重要です。もし意見が分かれる場合や、話し合いが難航する場合は、相続の専門家(弁護士や税理士など)を交えて話し合うこともひとつの手段です。形見分けは故人を偲ぶ儀式ですので、親族全員が納得し、円満に進めるための配慮が必要です。
遺産分割協議の重要性とその進め方
形見分けを行う前に、必ず遺産分割協議を行っておくことが重要です。遺産分割協議とは、故人が遺した財産(不動産や現金、株式など)を法定相続人がどのように分けるかを決定する手続きを指します。この協議を経て、各相続人が受け取るべき財産を明確にし、法的にも確定させます。遺産分割が完了していない状態で形見分けをしてしまうと、後々、相続財産として取り扱われる品物が決まらず、相続人同士の不公平感や争いを引き起こす可能性があります。
特に形見分け品が高価なものである場合、それが相続財産としてカウントされることもあり得ます。事前に遺産分割協議を行い、形見分けを進めることで、後のトラブルを防ぐことができます。また、遺産分割協議が円滑に進んでいない場合や、意見が食い違う場合は、弁護士や税理士などの専門家を交えて、第三者の意見を取り入れながら進めることが望ましいです。
まとめ
形見分けは、故人を偲び、その思い出の品を受け継ぐことで心の整理を行う大切な儀式です。遺族が心穏やかに形見分けを進めるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
・タイミングは、遺族が感情的に落ち着き、形見分けを実行する準備が整ったと感じた時がベストです。急がず、時間をかけて調整することが大切です。
・進め方については、まずは話し合いを重ね、遺品の価値や思い出を尊重しながら分けることが、円満に進める秘訣です。
・税金面に関しても、形見分けの際に不安が残らないよう、事前に確認しておくと安心です。必要に応じて専門家に相談し、適切な手続きを踏みましょう。
形見分けは、遺族が故人との思い出を大切にし、次の一歩を踏み出すための大切な時間です。焦らず、遺族間でしっかりとコミュニケーションを取りながら、お互いの気持ちを尊重して進めることが大切です。