近年、日本では高齢化が進んでおり、総務省統計局の調査では、日本の65歳以上の高齢者人口は約3割にも相当します。
それに伴い、遺品整理の需要が高まっています。また、核家族化も進んでいることから、遺品整理を自分たちで行う人が少なくなってきており、遺品整理業者へ遺品整理を依頼するケースが非常に多くなってきています。
しかし、遺品整理を自分たちで行うこと自体は可能です。今回は、遺品整理を自分たちで行うことをご検討されている方へ、作業にあたって準備したらいいものや進め方、コツなどをご紹介いたします。
自分で遺品整理をするために必要な準備
遺遺品整理では、整理しなければならないものが非常に多いため、事前にしっかり準備を整えておかないと、作業をスムーズに進めることが難しくなります。
この章では、遺品整理を行う際に準備しておくべきものについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①準備するもの~身に着けるもの編~
身に着けるものとして、用意しておきたいものは以下のとおりです。
・作業着
遺品整理の際は、汚れやけがを防ぐために、作業着を着て行うようにしましょう。長袖で、厚手の動きやすい生地のものがおすすめです。あまりにもかさばるものは避けることをおすすめします。
・スリッパ、内履きと軍手
割れ物を扱うことも多いので、スリッパや内履きを履き、軍手をつけて作業するのが望ましく、軍手は割れ物を落としてしまわないように、滑り止めが付いているものを選ぶと良いでしょう。
・マスク
遺品整理中はホコリやカビが舞うことも多いので、アレルギーや喘息などの持病を患っている方は特に、マスクを着用しておくとよいでしょう。
②準備するもの~道具編~(ゴミ袋・段ボール・台車など)
遺品整理の際は、多くのものを扱いますので、処分・運搬などに使う道具は事前に要しておきましょう。用意しておきたいものは以下のとおりです。
・段ボールとサインペン
遺品整理の作業では、物を必要なものと不要なものに分ける仕分けの作業があります。段ボールを用意しておくと、部屋の片づけがスムーズになります。サイズや形状の異なるものをいくつか準備することで、様々な品物に対応できます。また、その仕分けたものにはサインペンで印やメモをしておくと分かりやすいのでおすすめです。
・ファイル(クリアファイル、チャック付きのファイルなど)
遺品整理をしていると、契約書などの重要書類が出てくることがありますので、そういったものを一つにまとめて保管できるように用意しておくと便利です。
水にぬれたり、書類が折れたりしないように、防水性・耐久性が高い物を選ぶと良いでしょう。
・ゴミ袋
不要な物を処分する際にゴミ袋は必ず用意しておきたいものになります。特に、かさばる不用品が出る機会も多いため、大きめのサイズのゴミ袋を用意しておくと良いでしょう。
・掃除道具(掃除機、ほうき、雑巾、バケツ、掃除用洗剤など)
部屋の掃除用に用意しておきましょう。普段掃除しないところも行うことが多いと思いますので、頑固な汚れなども簡単に落としてくれるような掃除用洗剤を用意しておくのをおすすめします。
・台車
意外と思いつかないものですが、台車も可能な限り用意しておきたいものになります。遺品整理の作業では、家具や家電などの重たいものを長距離運搬しなければならないタイミングも多いため、台車があると体力的な負担を機軽減することができます。
・整理したものを運搬する車
整理したものを、運搬まで自分たちでしようとすると、かならず運搬用の車が必要になり、特に一軒家を丸ごと遺品整理した時には想像以上のものを運び出さなければなりません。
そのため、軽トラやワゴン車などの荷物をたくさん積むことが出来る車を用意することをおすすめします。
遺品整理の具体的な流れと行う際のコツ
遺品整理を行う際の、具体的な流れとコツをご紹介します。
①必要なものといらないものを仕分けする
遺品整理を行う際、まずは家中の物を「必要な物」と「いらないもの」に仕分けしましょう。この作業を先にやっておくと、その後の工程をスムーズに進めることができます。
必要となものとして残しておいた方がいいものは、以下のとおりです。
- 金融価値のあるもの(通帳、現金、クレジットカードなど)
- 身分証明書(パスポート、マイナンバーカードなど)
- 重要な書類(健康保険証、家や車などの契約書など)
- 残しておきたい思い出の品など
通帳やクレジットカード、書類関係などは無くしてしまわないようにファイルに入れ、まとめて保管しておきましょう。
また、思い出の品やいらないものに関しては、必要な物といらないものを保管する段ボールをそれぞれ用意し、その中にまとめて入れるようにしましょう。この時、どちらに分類したらいいか迷ってしまうものでも、後で再度チェックしますので、とりあえず大まかに分けるだけでも大丈夫です。
仕分けの際のコツとしては、まず大きなカテゴリーに分けてみることをおすすめします。「生活用品」「衣類」「書類」「思い出の品」といった具合に、ジャンルで分けておくと、整理がしやすくなります。
②いらないものを仕分けし、処理する
次はいらないものをさらに細かく分けて処分しましょう。
分ける際には、まず再利用できるものや売りに出せるものを選び取りましょう。再利用可能な物には、一般的に以下のものが挙げられます。
- 家電4品目(テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機、エアコン)
- 一般家電品(ドライヤー、パソコン、携帯電話など)
- 家具(ソファ、ベッド、タンス、食器棚など)
- 衣類
売りに出す場合は買取業者へ、リサイクルする場合は回収業者へ相談して処分しましょう。業者によっては、回収・運搬までしてくれるところもありますので、そういったところを選べば負担を軽減することができます。
また、上記のものの中で、特に家電4品目の処分には注意が必要です。家電4品目は、家電リサイクル法という法律に基づき、リサイクル料金と運搬料金を支払い、きちんとリサイクルすることが義務付けられています。
もう使わないものだからといって、粗大ゴミで出すことはできませんので、注意しましょう。
その他リサイクルできないもの、売りに出せないものはゴミとして処分します。
自治体が定める処分方法に従って、燃えるゴミ、燃えないゴミ、粗大ゴミに分別し、処分しましょう。
自治体によってはゴミとして出すことができないものが一部あります。そういったものは、不用品回収業者に依頼して引き取ってもらうか、購入した店舗へ引き取りが可能か問い合わせて、処分してもらうようにしましょう。
③清掃
物を片付けた後は、部屋を掃除しましょう。
掃除中は、十分に換気を行い、ホコリやカビ対策としてマスクの着用をおすすめします。
④必要なものの保管方法を決める
最後に、必要なものの保管方法を決めましょう。
湿気などに弱いもの、直射日光を避けた方がいいものなどもありますので、その品物に応じた保管方法を考えるようにしましょう。
また、形見分けとして誰かに譲渡するものは、きれいにしたうえで、誰に何をあげるのか分かるような状態で保管しましょう。
遺品整理を行う際に気を付けること
遺品整理をスムーズに行うためには、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
①スケジュールを最初に決めておく
遺品整理を始める際に重要なポイントの一つが、スケジュールを最初に決めておくことです。
遺品整理はかなりの手間と時間がかかるものですので、最初にしっかり計画を立てておくことで、スケジュールにメリハリをつけることができます。
スケジュールを立てる際には、まず全体の作業期間を決めましょう。全体の作業量を大まかに把握し、いつからいつまでの期間に終わらせるのかの目標を立てます。
遺品整理は故人との思い出に触れる機会も多く、精神的な負担がかかるものでもあります。そのため、いつまでに終わらせるのかを決めておくことがとても重要なのです。
そして、全体の期間設定ができたら、その期間の中で各作業の期間を割り振るのがおすすめです。
各作業の割り振りは、1日単位で目標を設定するのがおすすめです。「今日と明日で今の整理をする」、「その次の日は衣類を整理する日にする」といった具合に目標を立てていけば、作業に取り組みやすくなります。
②一緒に作業してくれる人を集めておく
遺品整理は、体力的・精神的に大きな負担がかかる作業です。一人ですべての作業を終わらせるのはとても難しいため、可能な限り一緒に遺品整理をしてくれる人を集めておくようにしましょう。
また、物を仕分けする段階で、必要なものかいらないものなのか判断に迷うものも必ずといっていいほど出てきます。そういったときに、相談できる人がいるととても心強いですので、気軽に相談できる間柄の人と一緒に作業できるとなお良いでしょう。
➂ 貴重品や重要書類の見落としを避ける
遺品整理を進める中で最も重要なのが、故人が大切にしていた貴重品や重要な書類をしっかりと見つけることです。これらは、普段から使っていない場所や目立たないところに隠されていることがよくあります。例えば、昔使っていた本やノートの中に大切な書類が紛れている場合もありますし、衣服のポケットや、家具の奥深くに保管されていることもあります。また、保険証書や金融機関の書類など、後々必要になるものが予想外の場所に隠されていることもあります。そのため、遺品整理の際には、隅々まで丁寧に確認し、見逃しがないように心掛けることが大切です。特に、不動産関連の書類や銀行の通帳、証券などの重要書類を見逃さないよう、遺品は慎重に取り扱いましょう。
遺品整理を自分で行う場合によくあるトラブル
遺品整理を自分たちで行う場合には、度々親族間でトラブルが発生してしまう場合があります。
ここでは、実際にあった親族間トラブル事例をいくつかご紹介します。
①誰が遺品整理をするのかで揉めてしまったケース
これは特に、親族の方々が遠方に住まれている場合、同居されているご家族がいなかった場合などに起こりやすいケースです。
遺品整理は大変そう、面倒なことが多そうというイメージから、親族間で押し付け合いになってしまうパターンが多いように思います。
②思い出の品を処分してしまい、トラブルになるケース
遺品の品々が、大切なものかそうでないのかの基準は人それぞれです。
遺品整理作業が終わり、品物を処分してしまった後で、どうして捨ててしまったのかと親族間で言い争いに発展してしまうケースもあります。
③形見分けで揉めてしまうケース
形見分けの際に、「価値が高い品物を誰がもらうのかで揉めてしまった」、「生前もらうと故人と約束していたのに、違う人に渡されてしまった」というケースもあります。
遺品整理作業が終わった後でも、トラブルに発展してしまう可能性は十分にありますので、親族間で十分に話し合い、慎重に行っていくようにしましょう。
業者に依頼するのも一つの選択肢
自分で遺品整理をしようと決心したものの、実際に作業を始めると、想像以上に負担が大きいと感じることがあります。故人との思い出が詰まった品々や、感情的な要素が絡むため、作業が進まないと感じる方も多いでしょう。そのような場合は、無理をせず、遺品整理業者への依頼を考えてみることをおすすめします。
遺品整理業者に依頼することのメリットは、まず感情的な負担を軽減できる点です。
遺品の量が非常に多い場合や、大型家具や家電の処分が必要な場合、業者に依頼することで作業が省けるため、無駄な時間や労力を省くことができます。また、自分たちで整理する際によく起こりがちな貴重品の見落としや、思い出の品を誤って処分してしまうリスクも軽減できます。
まとめ
今回は、遺品整理を自分で行う際の、準備するもの進め方などについてご紹介しました。
自分で遺品整理を行う際には、事前の準備がとても大切です。計画的に物事を進め、一つ一つのことを慎重に対処していくようにしましょう。
もし、作業の量や手続き内容から判断して、手間や不安な気持ちを軽減したい場合は、思い切って専門業者へ相談してみることもおすすめします。