遺品整理を行う際、部屋のお祓いをした方がいいのか疑問に思われる方が多くいらっしゃいます。結論としては、遺品整理の際に部屋のお祓いを行うケースはそれほど多くなく、必ず取り行った方が良いというものでもありません。しかし、代わりに「遺品供養」はよく行われています。
今回は、遺品整理の際に部屋のお祓いをした方がいいケースや遺品供養との違い、お祓いをする際の依頼先などについて詳しく解説します。
お祓いとは?
お祓いは、主に神道の儀式として知られています。部屋や遺品に宿った「穢れ」や「邪気」を払うことで、場を清めることを目的とします。特に故人が亡くなった後の住居や遺品は、精神的にも物理的にも重い空気が漂うことがあります。そのような場を清め、遺族や関係者が安心して整理を進められる環境を整えるのがお祓いの主な役割です。
お祓いの起源と歴史
お祓いの歴史は、日本の神話や古代社会の習慣にまで遡ります。日本神話の中では、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が黄泉の国(死者の世界)から戻った際に身を清めるための「禊(みそぎ)」を行ったエピソードが知られています。この禊が、お祓いの原型とされ、穢れを取り除き心身を清浄に保つための重要な行為として神道の儀式に取り入れられました。
一般的なお祓いの流れ
- 神職を呼び、部屋や遺品に対して儀式を行う
- 散布用の清め塩や酒を用いて浄化する
- 遺族が祈りを込めて故人に別れを告げる
遺品整理で部屋のお祓いが行われがちなケース
お祓いは必ずした方がいいというものではものであるとはいえません。しかし、以下のような特殊な理由で故人が亡くなられた場合は、部屋のお祓いをすることもあります。
ここでは、一般的にお祓いを行う場合が多い事例をご紹介します。
①故人が自殺・殺人・火災で亡くなった場合
故人が自殺、殺人、または火災によって亡くなった場合、残されたご遺族には悲しみや不安な気持ちが募っています。そのため、気持ちを整理し、前に進むための一助とする目的でお祓いを行うケースが多いといえます。
②故人が孤独死された場合
故人が孤独死となってしまった場合にお祓いをする理由としては、「ご近所の方・大家さんから要望があった」パターンが比較的多いといえます。
故人が住んでいた物件が賃貸物件であった場合、事故物件というイメージが残ってしまうため、少しでもネガティブなイメージを払拭するためにお祓いをすることがあります。
また、次の居住者の方がなかなか見つからない、又は入居後も心理的な不安を抱くケースが少なくありません。お祓いを行うことで、故人が安らかに旅立つイメージをもつことができ、気持ちを整理するための一手段となるのではないでしょうか。
お祓いをする理由
遺品整理の際に部屋のお祓いを行う理由はいくつかあります。まず、故人の思い出が色濃く残る部屋には、様々な感情が絡んでいることがあります。お祓いをすることで、その感情を整理し、心の平穏を得る助けとなることが期待されます。
次に、部屋が持つ空気の浄化です。長年住んでいた場所には、故人のエネルギーや思いが宿っていると考えられることもあります。お祓いによって、新しい生活空間として気持ちをリフレッシュすることができます。
さらに、遺族たちが部屋を整理する際の心理的負担を軽減するためにも、お祓いは有効です。心の整理ができることで決心がつき、スムーズに遺品整理を進めることが可能になります。これらの理由から、遺品整理で部屋のお祓いを実施することは、選択肢の一つとしてよく用いられています。
物件を売却・賃貸物件とするため
故人が住んでいた物件を売却したり、賃貸物件として貸し出す場合、故人が突然死や自殺などをされた場合には、「告知義務」として、物件の借主・買主に告知しなければなりません。その時、物件の借主や買主にとって、前の住人が亡くなっている物件だという事実は、入居をためらわせる要因となり得ます。
そのため、お祓いや供養をきちんとしておくことで、「お祓いをしっかり済ませてあります」と伝えることができ、少しでも心理的に抵抗を感じさせない物件にすることができます。
遺族の気持ちの整理のため
故人が亡くなった物件は、遺族としても故人に対する様々な感情を抱く場所となります。故人が自殺や事故などによって無くなられた場合には特に、故人の無念な感情がその場に残っているのでは、と考える方もいます。こうしたマイナスな感情を一掃し、気持ちの整理をつけ、故人の成仏を願うといった目的で、お祓いを希望されるケースが多くあります。
近隣住民の方・貸主の不安を拭うため
故人が自殺や事故、孤独死などをされた場合には、ご近所の方や貸主(大家さん)なども心理的な抵抗を持たれることもしばしばあります。そのような方たちに対して、不安な気持ちを少しでも払拭するための方法として、お祓いをする場合があります。
遺品整理での供養とお祓いの違い
遺品整理においては、「供養」が多く行われています。
では、お祓いと供養の違いは何なのでしょうか。ここでは、お祓いと供養の違い、供養とはどんなものなのかについて解説します。
供養とは?故人を弔う心の整理
それに対して供養とは、仏教や神道で行われる儀式のことで、故人の冥福を祈るために行い、故人の魂を慰め、成仏を願う行為です。法要の際に僧侶にお経を唱えてもらったり、お墓にお供え物を供えるのは、供養に該当します。
<供養の主な対象と方法>
- 対象: 故人の愛用品、写真、手紙、仏壇など
- 方法: お経を上げてもらう、遺品をお焚き上げに出す、仏壇での法要を行う
供養は、遺品をただ処分するのではなく、故人を思い出しながら感謝の念を込めて行うものです。
お祓いと供養の具体的な違い
遺品整理におけるお祓いと供養では、まず対象のものが異なります。
お祓いを行う対象は、部屋や土地、家などの「場所」であるのに対し、供養の対象は、遺品などの「物」であることが一般的です
また、行う目的の考え方も異なります。お祓いは、不浄や穢れを祓うことが目的ですが、供養は魂を成仏させることが目的です。
お祓いと供養の違い
項目 | お祓い | 供養 |
宗教 | 神道 | 仏教 |
目的 | 邪気を払い場を清める | 故人の魂を弔い成仏を願う |
対象 | 部屋や遺品の浄化 | 故人の愛用品や写真などを弔う |
方法 | 神職による儀式、清め塩、祈祷など | お経、焼香、お焚き上げなど仏教儀式 |
お祓いの依頼先と依頼費用の目安
部屋のお祓いを検討するとき、どこに依頼したらいいか戸惑うことは多いと思います。ここでは、主な依頼先と費用の目安について解説します。
①神社に依頼する場合
お祓いの依頼先として、まずあげられるのは神社です。
神社に依頼するメリットとしては、まず信頼感が得られることが挙げられます。神社でのお祓いは、古くから伝統的に行われているため安心感があります。
また、神社に依頼する場合には、好きな神社を選ぶことができるのもメリットの一つです。例えば、故人が生前に通っていた神社や、その土地にゆかりのある氏神様を祀る神社に依頼すると、より一層故人への弔いになったと感じる方もいらっしゃいます。
一方で、神社に依頼するデメリットとしては、日程を決めるまでにやや手間がかかることが挙げられます。
多くの神社では、予約や申し込みをしておく必要がありますので、事前に問い合わせておくようにしましょう。また、費用についても、問い合わせの際にしっかりと確認をしておくことをおすすめします。
②お寺に依頼する場合
先祖代々お寺にお世話になっている、または近所にお寺があるなどの理由でお祓いをお寺に依頼する際には、「加持祈祷(かじきとう)」や「厄払い」という形で依頼をしましょう。何故なら、お祓いとは神道の儀式であり、仏教ではお祓いという概念は存在しないためです。
費用についても、お寺によって1万円から数万円と幅がありますので、事前に確認をしておきましょう。
③遺品整理業者に依頼する場合
遺品整理業者のなかには、部屋のお祓いを依頼できる業者もあります。この場合、自分でお祓いの依頼先を探すという手間がありません。また、遺品整理に依頼する場合には、遺品整理からお祓いまでを一括して行ってもらう事ができますので、精神的・時間的にも余裕が生まれます。
費用については、神社やお寺に依頼すると、明確な料金形態が存在しておらず、「お気持ちで」といわれる場合もあるため、いくら包むべきなのか戸惑うことが考えられます。それに対して、遺品整理業者にの場合、お祓いも含む料金プランを用意しているとこもあれば、オプション料金として用意しているところもあります。どちらのケースでも、しっかりとした料金形態を明示しているため、総額でいくら必要なのかが把握することができ、後々の追加費用の請求トラブルの回避にもつながります。
まとめ
遺品整理を行う際には、お祓いは必ずしなければならないものではありません。しかし、場合によってはした方がいいケースなどもあります。お祓いをする際には、依頼先はいくつか選択肢がありますので、それぞれの特徴を踏まえて、希望に一番近いものを選ぶようにしましょう。
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