近年、空き家の増加が社会問題となり、その活用方法として空き家リフォームが注目されています。しかし、実際にリフォームを検討する際、「どのくらいの費用がかかるのか?」 と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで、今回は空き家リフォームにかかる費用の目安やリフォームのメリット、さら活用できる補助金制度などについて詳しく解説します。
目次
空き家リフォームの目的
空き家リフォームの目的は様々ですが、主に以下の3つのような例が挙げられます。
自宅として活用するため
親から受け継いだ実家や購入した空き家を、自分たちが快適に暮らせる住まいにするためにリフォームを行うケースが最も多いです。
自宅としてリフォームする場合、設備を新しくするのはもちろん、家族構成やライフスタイルに合わせて間取りを見直すことも重要です。また、家族構成やライフスタイルが変化する可能性があるなら、それに対応できる設計を考えるのもおすすめです。
賃貸物件として活用するため
近年では、空き家をリフォームし、戸建て賃貸として貸し出すケースも増えています。特に、実家を相続した場合、賃貸物件として活用すれば手放すことなく定期的な収入を得られるメリットがあります。 ただし、賃貸向けにリフォームを行う場合は、ターゲットとなる層のニーズに合った間取りや内装を事前に検討することが重要です。
売却するため
古い空き家を売却する際、リフォームを施すことで売却が有利になることがあります。一般的に空き家は「古そう」「管理が行き届いていなさそう」といった印象を持たれやすく、買い手が見つかりにくいことも少なくありません。しかし、リフォームを行えば「リフォーム済物件」としてアピールできるため、購入検討者が増える可能性があります。
空き家リフォームの費用相場
空き家リフォームの費用相場は、建物の状態や規模、リフォーム内容によって異なります。ここでは、「全体リフォーム」「部分リフォーム」「特殊なリフォーム」の3つのケースに分けて相場を紹介します。
全体的なリフォームの費用相場
建物全体をリフォームする場合、費用の相場は1,000万~2,000万円です。特に築年数の古い物件や大幅な間取り変更を伴う場合は、さらに高額になることがあります。
- 基礎や柱の補強工事:200~500万円
- 屋根、外壁の修繕:150~300万円
- 設備(キッチン・浴室・トイレなど)の交換:200~500万円
全体リフォームを検討する際は、まず専門業者に現地調査を依頼し、正確な見積もりを取ることが重要です。
部分リフォーム費用の相場
空き家の一部だけをリフォームする場合、比較的費用を抑えながら必要な改修が可能です。
主な工事項目と費用目安
- トイレのリフォーム:10~50万円
- キッチンのリフォーム:50~200万円(システムキッチンの場合は高額)
- 浴室のリフォーム:50~150万円
- 床や壁の張り替え:1㎡あたり5,000~15,000円
部分リフォームは、比較的短期間で完了することが多く、空き家の状態や予算に応じて柔軟に対応できる点がメリットです。
特殊なリフォームの費用相場
特定の目的で空き家をリフォームする場合、費用はさらに幅広くなります。
主な特殊リフォームと費用目安
- バリアフリーリフォーム(手すり設置、段差解消など):50~200万円
- 断熱性能向上リフォーム(窓・壁の断熱材交換):100~300万円
- 古民家再生リフォーム:2,000万円以上になることも
特殊リフォームは工事内容によって費用が大きく変動するため、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。
空き家リフォームのメリット
空き家リフォームすることのメリットには、以下のようなものがあります。
資産価値の向上
空き家リフォームをすると、資産価値の向上につながります。
空き家は普段の管理が不十分なことも多いため、住んでいる物件よりも劣化が早いという傾向にあります。例えば、換気をしないために湿気が発生しやすく、これが原因でカビが発生したり、木材が早く劣化したりする恐れがあります。
また、経年劣化による資産価値の低下も懸念されます。リフォーム工事によって、その資産価値を回復させることができるのです。
犯罪利用や倒壊のリスクを未然に防げる
家屋が手入れされていると、外観から空き家と判別しにくくなり、結果的に不法侵入などの犯罪リスクを低減できます。さらに、経年劣化などによる倒壊のリスクも、定期的な点検やリフォーム工事によって早期に発見し、対処できます。
このように、空き家のリフォームは単なる美観の向上にとどまらず、犯罪防止や倒壊リスクの軽減といった重要な役割も果たします。
空き家リフォームのデメリット
空き家リフォームにはいくつかのデメリットも存在します。その一つが費用の負担です。特に老朽化が進んでいる場合、想定以上の出費が発生する可能性があります。施工の途中で追加工事が必要になることもあり、結果的に当初の予算を大幅に超えてしまうケースも少なくありません。
また、地域によってはリフォームをしても物件価値が必ずしも上昇するとは限りません。市場の動向や需要次第では、想定した効果が得られないこともあるため、慎重な計画が求められます。
空き家リフォームの際のポイント
空き家リフォームを行う際には、いくつかのポイントを押さえておくと良いでしょう。
リフォームの目的を明確にする
リフォーム後の活用方法によって、必要な工事内容が大きく変わります。自宅として利用するのか、賃貸物件として運用するのかを明確にし、それに応じたリフォーム計画を立てましょう。
専門業者の選定
リフォーム業者を選ぶ際は複数社から見積もりを取り、施工内容やアフターサービスを比較することが重要です。また、工事の完了予定日を事前に確認し、スケジュール管理を徹底しましょう。
補助金制度を活用する
自治体によっては、リフォームに関する補助金制度が用意されています。申請のスケジュールや条件を事前に調査し、適用可能な補助金を活用することで、費用負担を軽減できます。なお、補助金の適用には特定の条件を満たす必要がある場合もあるため、注意が必要です。
リフォーム時の近隣への配慮
リフォーム工事では騒音や作業時間に配慮することが求められます。近隣住民とのトラブルを防ぐためにも、工事前に挨拶をするなどの対応を心掛けましょう。
空き家リフォームに活用できる補助金制度
空き家リフォームを検討する際、補助金制度を活用すれば費用負担を軽減できます。代表的な制度を以下に紹介します。
空き家対策推進事業
多くの自治体が実施するこの事業では、空き家のリフォーム工事に対して補助金が支給される場合があります。ただし、対象となる工事や支給条件は自治体によって異なるため、事前に地元の制度を確認しましょう。
耐震診断・改修に関する補助金
一部の自治体では、耐震診断や耐震改修を実施する際に補助金が提供されています。要件や補助額は地域ごとに異なるため、詳細を確認することが重要です。
省エネリフォームの補助金
国や自治体は、断熱改修や太陽光発電設備の導入など、省エネ性能を向上させる工事に対して補助金を支給しています。特にエコキュートの設置や窓の断熱工事は対象になりやすいため、条件を確認してみましょう。
補助金を活用するためのポイント
補助金制度は自治体ごとに条件が異なるため、最新情報を自治体のホームページや相談窓口で確認することが重要です。適切な補助金を活用することで、リフォーム費用を大幅に削減できる可能性があります。
札幌市の空き家リフォーム補助金制度
札幌市では、空き家の活用を促進するため、以下のような補助金制度を設けています。
「空き家バンク」登録を前提とした補助金
空き家バンクとは、自治体が運営する制度で、地域内の空き家を有効活用する仕組みです。空き家の所有者(売り手・貸し手)と、購入・賃借希望者(買い手・借り手)をつなぐ役割を担っています。
札幌市では、この空き家バンクに登録された物件のリフォームに対し、助金が支給されます。一定の条件を満たせば、工事費の一部が補助されるため、制度の概要を紹介します。
補助内容
- 通常型
最大50万円(解体費用の1/3等の条件あり) - 地域連携型
最大150万円(解体費用の9/10等の条件あり)
※地域連携型では、解体後の土地を5年間、地域団体に無償提供することに同意する必要があります。
対象工事の条件
- 解体前の事前確認で「危険空き家」と判断されたもの
- 市内に1年以上未使用の建物が対象
- 指定業者による解体工事のみ対象
- 他の補助金を受けていないこと
申請者の要件
- 解体予定空き家の所有者や親族
- 市税を滞納していない個人
- 反社会的勢力と無関係であること
注意点
- 交付決定前の工事は補助対象外
- 解体後は固定資産税の増加が見込まれる可能性あり
この補助金制度を利用することで、空き家の再生を促進し、地域活性化にもつながります。ただし、補助金の内容や申請方法は自治体によって異なるため、最新情報を自治体ホームページや相談窓口で確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。
まとめ
本記事では空き家リフォームにかかる費用や放置するリスク、活用できる補助金制度について解説しました。空き家を放置すると税負担の増加や近隣トラブル、犯罪リスクが高まるなど、さまざまな問題が発生します。 一方で、リフォームを行えば住居や賃貸物件として活用でき、資産価値の向上にもつながります。
リフォームの費用は改修の規模や内容によって大きく異なりますが、補助金制度を活用することで経済的負担を軽減することが可能です。