近年、空き家の件数は増えてきており、その活用方法として空き家リフォームが注目されています。しかし、実際にリフォームをしたいと思ったとき、費用はいくらかかるのか疑問に思われる方も多いでしょう。
そこで、今回は空き家リフォームにかかる費用やリフォームをするメリット、空き家リフォームの際に活用できる補助金制度などについてご紹介します。
目次
空き家リフォームの目的
空き家リフォームの目的は様々ですが、主に以下の3つのような例が挙げられます。
自分たちが住む自宅にするため
親から受け継いだ実家や、購入した空き家を自分たちが住みやすい家にするために、リフォームをするケースが最も多いです。
自分たちが住む自宅にするためにリフォームをするのであれば、設備を新しくするのはもちろん、家族構成やライフスタイルなどに合わせて間取りを見直す必要があるかもしれません。
家族構成やライフスタイルが将来的に変化する可能性があるならば、それに対応できるようリフォームするのがおすすめです。
賃貸物件にするため
最近では、空き家をリフォームした後、戸建ての賃貸物件として貸し出すケースも増えています。
リフォームを考えている空き家が自分の実家だった場合、賃貸物件にすれば、手放すことなく定期的な収入を得られるというメリットもあります。
賃貸物件としてリフォームする場合、ターゲットとなる層のニーズに合わせた間取りや内装を事前に考えておく必要があります。
売りに出すため
古い空き家を売却する場合、リフォームをしてから売ることで売却が有利になります。一般的に空き家は「古そう」、「管理が行き届いていなさそう」などの理由で買い手が見つかりづらいことも多いですが、リフォームをしていれば、リフォーム済物件であることがアピールできるため、買い手が見つかりやすくなるのです。
空き家を放置するリスク
空き家を放置していた場合、以下のようなリスクが高くなります。もし空き家を放置してしまっている方がいるならば、早急に対策が必要です。
特定空家に認定されてしまう
空家等対策特別措置法において、特定空家とは、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」と定められています。
特定空家として指定されてしまうと、地方自治体から指導が入ってしまったり、勧告や命令が出されたりすることがあります。また、場合によっては罰金が科されたりすることもありますので、もし指定を受けてしまったら早急に対応をしなければなりません。
近隣住民への迷惑
空き家を放置すると、近隣住民へ大きな迷惑が掛かってしまいます。
例えば、雑草が生い茂ると、そこに虫が大量に湧いてしまったり、空き家だとわかるとゴミを不法投棄されたりしてしまうこともあります。また、犯罪に利用されるリスクも高くなりますし、空き家が老朽化して倒壊し、周囲に危険を及ぼす可能性も考えられます。
このように、空き家は様々な要因で近隣住民への迷惑になってしまうのです。
税金が高くなる
2023年の法改正に伴い、「管理不全空き家」という分類が制度化されました。
管理不全空き家とは、「このまま放置すれば、いずれ特定空き家として指定される恐れのある空き家」のことで、法律上では以下のように定義されています。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
管理不全空き家として指定されると、固定資産税などの特例措置の対象から外れてしまい、支払う税金額が高くなってしまいます。
犯罪に利用されるリスクがある
空き家を放置しておくと、何かの犯罪に巻き込まれてしまうというリスクもあります。
実際、過去に起きたケースだと、犯罪者が窃盗目的で空き家に侵入し、証拠隠滅のために放火をした事件や空き家で薬物密売を行っていたという事件などもあります。また、信じがたいですが、放置していた空き家に勝手に知らない人が住み着いていた(不法占拠)なんて事件もあります。
以上のことからも、空き家を放置しておくというのは危険なことだというのがお分かりいただけたかと思います。
空き家リフォームの費用相場
空き家リフォームの費用相場は、建物の状態や規模、リフォーム内容によって異なります。ここでは、「全体リフォーム」「部分リフォーム」「特殊なリフォーム」の3つのパターンで詳しく見ていきましょう。
全体的なリフォームの場合の費用相場
空き家を全面的にリフォームする場合、費用は一般的に1,000万~2,000万円が相場です。特に築年数の古い家や、間取りの大幅な変更を伴う場合は、さらに費用がかさむことがあります。 以下は、主な工事項目とそれぞれの費用目安です。
- 基礎や柱の補強工事:200~500万円
- 屋根や外壁の修繕:150~300万円
- 設備(キッチン・浴室・トイレなど)の交換:200~500万円
全体リフォームを検討する際は、まず専門のリフォーム会社に現地調査を依頼し、正確な見積もりを出してもらうことが重要です。
部分的なリフォームの場合の費用相場
空き家の部分的なリフォームは、必要な箇所を選んで行うため、比較的安価に済むケースが多いです。以下は、主な工事個所と費用目安です。
- トイレのリフォーム:10~50万円
- キッチンのリフォーム:50~200万円(システムキッチンの場合はさらに高額)
- 浴室のリフォーム:50~150万円
- 床や壁の張り替え:1㎡あたり5,000~15,000円
部分リフォームは、比較的短期間で完了することが多いため、空き家の状態や予算に応じて柔軟に対応できる点が魅力です。
特殊なリフォームの場合の費用相場
空き家を特定の目的で利用するために特殊なリフォームを行う場合、費用はさらに幅広くなります。
- バリアフリーリフォーム(手すりの設置、段差解消など):50~200万円
- 断熱性能向上リフォーム(窓や壁の断熱材交換):100~300万円
- 古民家再生リフォーム:2,000万円以上になることもある
こうしたリフォームは用途や希望によって費用が大きく異なるため、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。
空き家リフォームのメリット
空き家リフォームすることのメリットには、以下のようなものがあります。
資産価値の向上
空き家リフォームをすると、資産価値の向上につながります。
空き家は、普段の管理が不十分なことも多いため、住んでいる物件よりも劣化が早いという傾向にあります。例えば、換気をしないために湿気が発生しやすく、これが原因でカビが発生したり、木材が早く劣化したりする恐れがあります。
また、物件は一般的に築年数が経てば経つほど経年劣化も激しくなり、資産価値が落ちてしまいます。リフォームをすることで、その資産価値を回復させることができるのです。
犯罪利用や倒壊のリスクを未然に防げる
まず、リフォームによって家屋が手入れされると、空き家ということが外から分かりづらくなるため、結果的に不法侵入などの犯罪リスクを減らすことができます。さらに、経年劣化などが原因で生じる倒壊のリスクも、定期的な点検やリフォームを行うことで問題を早期に発見し、対処することが出来ます。
このように、空き家のリフォームは単なる美観の向上だけではなく、犯罪防止や倒壊リスクの軽減といった重要な役割も果たします。
空き家リフォームのデメリット
空き家リフォームにはデメリットも存在します。まず一つ目は、リフォームにかかる費用です。特に老朽化が進んでいる場合、予定以上の出費が発生することがあります。施工途中で追加の工事が必要になる場合もあるため、当初の予算を大幅にオーバーしてしまうケースもめずらしくありません。
また、地域によってはリフォーム後の物件価値が必ずしも上がらない場合があります。市場の動向や需要により、想定した効果が得られないこともあるため、慎重な計画が必要です。
空き家リフォームの際のポイント
空き家リフォームを行う際には、いくつかのポイントを押さえておくと良いでしょう。
リフォームの目的を明確にする
居住用とするのか、賃貸物件として活用するのかによって、リフォームの内容は大きく変わります。
専門業者の選定
複数の業者に見積もりを依頼し、施工内容やアフターサービスを比較することが大切です。また、いつまでに終わるかの施工期間についても、事前に確認しておくと安心です。
補助金制度を活用する
次の章で後述する補助金制度を活用する場合、申請スケジュールや条件をしっかり調べておくことが重要です。自治体によっては、リフォームに際して特定の条件を満たさなければならない場合があります。
リフォーム時の近隣への配慮
リフォーム時には、工事で発生する騒音や工事時間への配慮が求められます。ご近所トラブルを避けるためにもこれらの点にも注意しましょう。
空き家リフォームに活用できる補助金制度
空き家リフォームを検討する際、補助金制度を上手に活用することで費用を抑えることができます。以下に代表的な例を挙げます。
空き家対策推進事業
多くの自治体が実施するこの事業では、空き家のリフォーム工事に対して補助金が支給される場合があります。ただし、対象となる工事や支給条件は自治体によって異なるため、地元の制度を確認することが重要です。
耐震診断・改修に関する補助金
一部の自治体では、耐震診断や耐震改修を行う際に補助金を提供しています。この制度も地域ごとに要件や補助額が異なるため、詳細な確認が必要です。
省エネリフォームの補助金
国や自治体は、断熱改修や太陽光発電設備の導入など、省エネ性能を向上させる工事に対して補助金を支給しています。特にエコキュート設置や窓の断熱工事などは対象になりやすいため、条件を確認してみましょう。
これらの制度は地域や条件によって異なるため、必ず自治体のホームページや相談窓口で最新の情報を調べることをおすすめします。適切な補助金を活用することで、リフォーム費用を大幅に削減できる可能性があります。
札幌市の空き家リフォーム補助金制度
札幌市では、空き家の活用を促進するため、以下のような補助金制度を設けています。
「空き家バンク」登録を前提とした補助金
空き家バンクとは、自治体が運営する制度で、地域内の空き家を有効活用するための仕組みです。空き家を所有する人(売り手・貸し手)と、それを購入・賃借したい人(買い手・借り手)を結びつける役割を果たします。
札幌市では、この空き家バンクに登録された物件をリフォームする際、助金が支給されます。一定の条件を満たすことで、工事費の一部を負担してもらえるため、主な概要をご紹介します。
補助内容
- 通常型
最大50万円(解体費用の1/3等の条件付き) - 地域連携型
最大150万円(解体費用の9/10等の条件付き)
※地域連携型では、解体後の土地を5年間、地域団体に無償提供し、活用に同意が必要です。
対象工事の条件
- 解体前の事前確認で「危険空き家」と判断されたもの
- 市内に1年以上使用されていない建物が対象
- 指定業者による解体工事のみ対象
- 他の補助金を受けていないこと
申請者の要件
- 解体予定空き家の所有者や親族など
- 市税を滞納していない個人
- 反社会的勢力との関わりがないこと
注意点
- 交付決定前の工事は対象外
- 解体後は固定資産税の増加が見込まれる可能性あり
この補助金制度を利用することで、空き家の再生を促進し、地域活性化にもつながります。しかし、補助金の内容や申請方法は自治体ごとに異なる場合があるため、各自治体の最新情報を確認し、必要な手続きをしっかりと行うことが大切です。
まとめ
空き家リフォームにおける費用と補助金について解説しました。空き家のリフォームを検討する際、費用の負担は大きな課題となりますが、各自治体が提供する補助金制度をうまく活用することで、経済的な負担を大幅に軽減できます。自治体情報をしっかりとチェックし、利用できる制度を探しましょう。